「露出」の時代から、「納得」の時代へ

「コロナ後、ECの売上が落ちた。」

 

2025年は、そんな声を耳にすることがありました。

 

しかし、正確には、落ち込んだのではなく、「コロナ前の状態に戻った」というのが真実です。

コロナ禍では、外出自粛や店舗営業の制限により、多くのユーザーがリアル店舗からECへ流れました。

 

当時は、EC業界全体がバブルのような状況でした。

 

広告を出せば売れる。

商品を掲載すれば売れる。

新しく出店しただけでも売れる。

 

そんな追い風が、多くのEC事業者を後押ししていました。

 

しかし、コロナが収束すると、人々はリアル店舗へ戻り、旅行や外食へお金を使うようになりました。

その結果、多くのECサイトはコロナ前と同程度、あるいは少し上の売上水準へと収束していきました。

 

ところが、現場ではもう一つ、大きな変化が起きています。

 

私は20年以上ECサイトの運営・コンサルティングに携わり、現在も数十社のデータを継続的に観察しています。

その中で共通して感じているのは、楽天市場の店舗PVが以前より大きく減少していることです。

 

一方で、非常に興味深いことに、多くの店舗で転換率(CVR)は大きく改善しています。

つまり、アクセスは減っているのに、売上はPVほど落ちていないのです。

 

これは見方を変えれば、以前よりも「購入意欲の高いユーザー」が集まるようになったとも考えられます。

以前は、多くのユーザーを店舗へ送り込むことが重視されていました。

その中には、購入につながらないアクセスも数多く含まれていました。

店舗側も、そうしたユーザーに対して広告費や販促費を使い続けていたのです。

 

現在はPVこそ減りましたが、その分、購入につながるアクセスの割合は高くなっています。

私は、この数字の方がEC本来の姿に近いのではないかと感じています。

 

そして、この変化の背景には、ユーザーの買い物の仕方そのものが変わったことがあります。

以前は、楽天市場を眺めながら商品を探し、「なんとなく良さそうだから買ってみよう」という、ウインドウショッピングのような買い方も少なくありませんでした。

 

しかし現在は違います。

 

SNSやYouTubeで情報を集め、レビューを読み、他社商品と比較し、本当に欲しい商品なのか、自分に必要なのかを十分に調べたうえで検索してきます。

つまり、お客様は商品を探しに来ているのではありません。

「この商品で間違いないか」を確認しに来ているのです。

だからこそ、これから重要なのは商品の露出ではありません。

 

もちろん、広告やSEOによって商品を見つけてもらうことは必要です。

しかし、それだけでは選ばれません。

 

お客様が知りたいのは、

「なぜこの商品なのか。」

「他の商品と何が違うのか。」

「自分に本当に合っているのか。」

「価格に見合う価値があるのか。」

その答えです。

 

商品ページ、写真、動画、レビュー、Q&A、ブランドストーリー。

それらすべては、お客様に「納得」していただくためのコミュニケーションです。

 

これは特別なマーケティングではありません。

リアル店舗では昔から当たり前に行われてきた接客です。

 

お客様の話を聞き、不安を解消し、商品の価値を伝え、納得していただいてから購入していただく。

ECも、ようやくその当たり前の時代になったのです。

 

そして、その変化は2026年になって、さらに鮮明になっています。

 

私が観察している数十社の店舗でも、売上を大きく伸ばしているのは、広告費を大幅に増やした会社ではありません。

商品の価値を丁寧に伝え、お客様の疑問や不安を解消し、「この商品なら間違いない」と納得していただけるページやコンテンツを作り続けている会社です。

商品ページを改善し、動画を活用し、レビューを増やし、ブランドの想いまで伝える。

そんな地道な積み重ねを続けてきた会社ほど、転換率が向上し、結果として売上も大きく伸びています。

 

一方で、広告やポイント施策だけに依存してきた店舗は、以前ほど成果が出にくくなっています。

これは一時的な流行ではありません。

私は、EC市場そのものが次のステージへ進んだのだと感じています。

 

コロナ特需という追い風は終わりました。

しかし、それはEC市場が衰退したということではありません。

市場が成熟し、企業の本当の実力が問われる時代になったということです。

 

これからは、PVを競う時代ではありません。

「露出」の時代から、「納得」の時代へ。

 

2026年は、その変化が結果として数字に表れ始めた一年でもあります。

お客様を「集める」ことよりも、お客様に「納得して選んでいただく」こと。

その力を持つ企業だけが、これからも着実に成長していくのだと私は考えています。

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